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■5


泥のように眠って、起きたときには12時間以上が過ぎていた。
意識の覚醒とともに夕べの記憶が鮮明になってきて、ゾロは顔を赤らめながらも血の気が引いた。 自分が信じられなかった。
そして、忘れようと思った。
彼はあのバーの馴染みのようだった。きっと、行けばまた会えるだろう。
けれど、行かない。

もう、サンジには会わない。

そう思っていたのに、サンジは当然のようにゾロの前に現れた。
大学の校門前。
4限の講義を終えて家路につこうとしていたゾロに、きらきらとした輝きが眼に入った。
風に揺れる金髪の持ち主は、やさしい声で会えて良かった、と笑った。
固まってしまったゾロの手を取り、サンジはずんずんと歩いて行く。
どこに行くんだと問えば、近くに公園があったからと答える。
あれからまだ3日しか経っていなかった。
存外しっかりと握られたサンジの手が気になって仕方がない。
骨張った、指の長い手。
この指が、自分の身体を余すところ無くさわったの思い出して、ゾロは一人顔を赤らめた。
サンジの手はさらりとしていたのに、ゾロの手が汗ばんだせいで次第に湿り気をおびていく。そのせいでいっそうあの夜の事が思い出された。
自分だってさわった事のないあちらこちらをさわられて、ましてあんなところが気持ちいいだなんて。
肩掛けにしたショルダーバッグのベルトを、ゾロは知らずぎゅうと握りしめた。
二度と会うまい、と思っていたのにいざ目の前にすればその決意は簡単に揺らいでいる。


サンジに促されるまま公園のベンチに腰掛ける。サンジはゾロの手を離さず、立ったままだ。ゾロは警戒している風を装って、彼から目を離さなかった。
陽光の下で見るサンジは不思議な感じがした。金糸がきらきらと陽に輝いて、やはりコイツは綺麗な男だと思う。
先に口を開いたのはサンジだった。
「この前はびっくりした」
まさか、一夜を共にした相手に殴られるなんてね。
「あれは…悪かった」
ゾロは思わず目を伏せた。
あの日の朝、おはようと声をかけてきたサンジを思わず殴りつけたのだ。
「別に怒ってないよ」
その言葉に顔を上げると、笑うサンジと目があった。
「驚いちゃったんだろう?」
言い当てられてゾロは驚く。
ゾロも、と彼は続けた。
「俺も驚いたから、仕方がないと思うよ。
 初めてなのに、あんなに乱れてくれたもんね」
最後の言葉は、ゾロの耳元でささやかれた。
上体を曲げたサンジの顔は、吐息がかかるくらい近い。
その温度と、手のひらをなぞりあげたサンジの指にぞくりと震え、瞬時に頬が朱に染まる。
思わずサンジの手をふりほどこうとしたけれど、サンジはそれを許さなかった。
「あぁでも、頬はちょっと腫れたかな。職場の奴らにも何悪さしてきたって言われたよ」
笑いながらサンジはゾロの手を引き、自分の頬に当てさせる。その手を包み込むように、サンジの手が重ねられた。
ゾロは自分の手がじっとりと汗ばんでいるのを自覚する。
よく見れば、サンジの頬はやや青みがある。きっとゾロが殴ったせいだろう。
「悪い」
「ホントに悪いと思ってる?」
「あぁ」
「じゃあさ、お詫びにココでキスしてよ」
「は?」
突然の提案に、ゾロは眉をひそめた。
あたりに人気はないとは言え、日中の公園で、しかも大学も近い。
「そりゃ…無理だろ」
「なんで?ちょっとちゅっとするだけでいいのに」
「お前の部屋じゃあるまいし」
「そりゃあねぇ。でも、こういう場所でするからお詫びになると思うんだけど」
思わず言葉に詰まったゾロに助け船を出すようにサンジが言う。
「ここじゃなきゃお詫びしてくれる?」
サンジの青い目は完全にいたずらっ子のそれだった。
いや、いたずらなんてかわいいものではないだろう。けれど、ゾロはすでにそれに逆らえなくなっていた。
サンジの指がゾロの手の甲をなぞったのを合図に、ゾロはこくりと頷いた。



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