■4


タクシーに乗ってつれていかれたのは彼の住むレジデンスだった。
バーでサンジに会ってから、妙な高揚感がずっと続いている。熱に浮かされたようなゾロを、サンジは躊躇無くベッドルームに案内した。
ほんとうは飲み直そうかとも思ったんだけど、と彼は言った。
「ゾロがあんまりかわいい顔してるから、我慢できないや」
言われた台詞に面食らうが早いか、サンジが柔らかく口づけてきて、抗議するタイミングを逸する。 かわいいだなんて、生まれてこの方初めて言われた。
上唇と下唇を往復する小鳥のようなキスなのに、なぜか一切の抵抗ができない。
思わずぎゅうと目をつぶったゾロの耳に、サンジがふふ、と笑ったのが届いた。
「ゾロ、お前こういうの初めてだろ?」
唇を触れあわせたままそう問われて、とっさにどう答えたものか迷う。
逡巡の後、女とはある、と言ったゾロにサンジは待たせたね、と応えて、ゾロを丁寧にベッドに横たえた。

それからのサンジは、服も脱がずにゾロを翻弄した。
やめろ、と言うゾロの口だけの抵抗を、手とくちびるだけで上手に封じる。
全身を真っ赤にほてらせたゾロは、泣きじゃくりながら三度目の吐精を果たした。
「泣くほど気持ちよかった?」
それとも、泣くほど悔しかった?
どちらの問いにも答えられずに、ゾロは闇雲に首を振った。
サンジの長い指が奥に入り込んで、ゾロはまた身を震わせる。
そんなところがほんとうに気持ちいいだなんて、ゾロは今日はじめて知った。
一度目の射精で汚してしまった下着はとっくに脱がされていて、ゾロの前は白濁でどろどろだった。 2本目の指がいいところをこすりあげ、たまらず声を漏らしたゾロに、サンジがあまいあまい声でささやく。
「射精してるときのゾロ、小さく震えて、赤ん坊みたいに無防備で、すごく可愛かったよ」
「…ひ、ぁっ」
「まぁ、こんなにたっぷりの精子、赤ん坊は出さないけどね」
乳首を甘噛みしながらサンジが笑って、その振動にぞくりと震える。
ゾロの右手はサンジの左手に握られている。
サンジはただ握っているだけだ。それなのに、ゾロはどうしてもそれをふりほどけなかった。
ゾロの足と足の間にいるサンジは、そろそろいいかな、と言ってジッパーを下げた。その音を聞いて走った震えが、恐れから来るものなのか、期待から来るものなのか、ゾロにはもう分からなかった。

その後の事を思い出すのは、ゾロにとってたまらない恥辱だ。
「どうされたいのか言ってごらん」
「分、かんねぇ…」
「どうして?かわいがって欲しい?いじめてほしい?」
「…ア、…あっ」
「なんでもいいよ、素直に、ゾロがされたい事を言うだけでいいんだよ」
「め、めちゃくちゃに、されたい…っ」
「いいコだね、ゾロ」

「乳首を噛まれると感じるんだ?」
「や、あ、あ、ちが…、ちがぅ」
「そうなの?じゃあやめようね」
「うぅ…っ、や、やだ、」
「どうしたの、ゾロ?」
「サンジ…っ、ちくび、じんじんする…、噛んで…っちくび噛んでぇ…っ」

次の日の朝、サンジの腕の中で目覚めたゾロは、ほうほうの体で逃げ出した。
ともすれば抜けそうになる腰を叱咤しながら、自分のアパートに帰り着き、ベッドで嗅ぎ慣れた自分の匂いに包まれてようやっと安堵した。
サンジのことも、自分自身のことも、
なにもかもが怖かった。

初めての時から、サンジのセックスは非道いほどゾロに優しい。



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