■6・ROBIN

部屋に帰ってくるなり、航海士さんはどさりとベッドに倒れ込んだ。
うつ伏せに寝ころんだ顔はシーツで半分以上隠れているが、上機嫌なことに間違いはない。
「踊り疲れた?」
「もーくたくた」
あの後は結局最後まで踊り通しだった。長鼻君と船医さんはもうステップなんか無視してはしゃぎ倒し、剣士さんもかり出された。自分も思いがけずワルツを踊ることになって、コックさんの足を何度か踏んづけつつも踊り続けた。
「アイツったら、慣れてきたら調子に乗って人のことホイホイ振り回すんだから」
船長さんは今日初めて踊ったとは思えないほど上達した。
「ふふ」
「…なーに、その顔」
思わず漏れた笑いに、航海士さんが唇を尖らせる。そんな顔をするからいじめたくなるのだ。
「船長さん以外とは踊れなくなっちゃったわね」
言うと彼女は真っ赤になった。シーツの中でもぞもぞしながらもう、ロビンまで…とは言っているが、恥ずかしがっているだけなのは明白だ。
「でも、嬉しいでしょ?」
シーツを頭までかぶってしまった彼女がピタリと動きを止めた。しばしの間の後、頭のあるらしき部分が頷きの形に揺れる。
若さって素敵なものね、とひとりごちて、自分も寝るためにベッドに入った。

少女は、まだまだ幼いながらもたまにひどく大人びた表情を見せる。
最近は以前にはなかった彼女からの信頼を感じ取り、いままで見せなかったようなあどけない表情も見せてくれる。ロビンはそれが素直に嬉しかった。
今日は彼女の誕生日だったが、そんなものは区切りの一つでしかないとロビンは思う。
彼女は日々成長し、その輝きを増している。
きっと、将来は同性の自分から見ても魅力的な女性になるだろう。
今だって充分魅力的だけれど。
できるならずっと見ていきたいと思う。

「お誕生日、おめでとう」

ここ何年も口にしたことのないような言葉が、この船に乗ってからずいぶん滑らかに出てくる。この言葉もその一つだ。

私に妹がいたら、こんな感じかしら。
胸にそんな思いを抱きつつ、シーツから出てきたオレンジ色の髪をそっと撫でた。


■ end.
2005/07/05



ナミ誕!ナミ、誕生日おめでとうー!
御大の描く女性は誰もが皆芯があって大好きですが、そのなかでもやっぱりナミは格別。アーロンパーク編の「助けて」から、空島へ行く時の「航海士は誰!?」まで、どんどん輝きを増していく彼女が大好きです。



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