■  夜曲  ■



「あーあ、クソゴムが色気付いちまったよ。麗しのナミさんがアイツの毒牙にかかっちまう。いっつもなら蹴飛ばしてやるんだけどなぁ、でもナミさんのあんな顔見せられちゃなぁ、クソッ、あのゴムゴム魔神め」
延々と垂れ流される悪態もいい加減聞き飽きたので、目の前のクソコックの後頭部を殴りつけると、自分に覆い被さってたそれがガバリと身を起こした。
「いってぇな、このクソ野郎! 手前ぇにゃあこの傷心のサンジ様を慰めようっつー気概はねぇのかよ!」
その言葉にこめかみがひくついた。
見張り台に乗り込んできたと思ったら問答無用で人の服をひっぺがし始め、そのままヤるのかと思いきや裸の胸に顔を埋めたまま愚痴大会だ。
俺には、殴るどころかお前を海の藻屑にする権利もあると思うんだがな?
俺の殺意を感じ取ったのか、サンジの眉がへにょんと下がる。
「あー、クソ、悪かったよ。お前に当たって」
髪をかき揚げ、上を降り仰いだところで奴の空気が一変する。
「…慰めろよ」
そう言った顔は到底落ち込んでるようなものではなく。
むしろ肉食獣が舌なめずりするのを想起させ、ゾロは背筋がぞくりとするのを感じた。

「…テメっ、歯ぁ立てんな…っ」
「こんぐらいが感じるくせに」
くわえた乳首をがじりと囓られた。そのまま舌で押しつぶすように舐め回されれば、抑えていた声が漏れてしまう。
「ほら見ろ」
しのび笑いに体温が上がる。口での愛撫を止めないまま、指が後ろに伸びてきた。やわやわと周辺だけを揉み込んで、中には侵入しようとしない。
反対の手で前からこぼれた滴をぬぐい取っては後ろに塗り込められる。
前に押しつけられるペニスはもう堅いのに、好色な笑みを浮かべた奴はじらすのを止めようとしなかった。料理人の長い指が、気まぐれに第一関節まで入っては出ていってしまう。
「ふ…っ、っあ、」
そのくせ前をいじる手は手荒で、竿を扱きあげては先端をぐちぐちと音を立ててさすられる。奥が疼いて、知らず腰が動く。
「へへ…もっと奥にほしい?」
睨みつけたが、この熱に浮かされた顔では奴を煽ったにすぎない。
「…っ」
いきなり二本突き入れられて背がのけぞる。そのまま何度も突き入れられて、思わず目の前の体に抱きついた。サンジの抱き方は結構乱暴で、荒々しい。
でも、それがよかった。男を抱くのに相応な手つきだ。もしも女のような抱き方をされてたら、自分は最初の夜から尻尾を巻いて逃げ出していただろう。
「あー、俺もう限界。入れていい?」
さんざんじらしやがった張本人のくせに、腰を押しつけてそんなことを言うから、力任せに床に押し倒してやった。
「え、ちょ、ゾロ?」
抗議の声をあげるサンジを無視してその上に跨り、勃ち上がったものを後ろ手に探る。
こんなに堅くなるまで我慢してるんじゃねぇよ。
自分の後ろにあてがってゆっくりと身を沈める。くそ、結構難しいなコレ。
「…うわ、すげー眺め」
見上げたサンジは俺を観察することに決めたようだ。情欲に濡れた視線が全身をくまなく這い回る。
「ひとりでできんの?」
「うるせ…っ」
自分から身を進めることは想像以上にきつかった。あれだけほぐされたのに入り口は未だかたくなで、なかなかサンジを迎え入れようとしない。身じろぎする度にいたたまれない音が聞こえて、それがさらに自分を煽る。
「っ…あ」
ようやっと先端が入ってきた。飲み込んだ瞬間くぷりと音がした気がするが、それは体内で生じたものだ。今ゾロの鼓膜が拾うのは自分の荒い息しかない。一番太い部分を一番狭隘な場所が締め付ける。
ぶるぶると震える手の負担を少なくしようと姿勢を変えたら、ちょうどいいところを擦り上げてしまった。あられもない声があがりそうになり、とっさに唇を噛みしめる。
それを見てか、いっそうブツを大きくしやがった。この阿呆が。
とにかくもう少しいれないと、自分がつらいばかりだ。峠を越せば楽になるかと思ったが、見通しが甘かったことを思い知らされる。むしろサンジと繋がった面積が広がるほど、身の内の熱がゾロの中を暴れて苛んだ。
「今日なんでそんな積極的なの?」
それまで腰に添えるだけだった手が動き出した。手を胸に這わせながら、緩く腰を突き上げられる。何度か繰り返される度にサンジの熱が肉をかき分けてこの身を浸食する。

なんで、だと?

漏れそうになる声を抑えながら睨んでやる。スケベったらしさを隠さない奴の目にますます腹が立った。腹いせに締め上げてやり、うぉタンマタンマ、出ちまう、と慌てたそぶりを返すサンジに知らず頬が緩む。

……妬いたのが、ルフィだけだと思うなよ。

ナミと踊るこいつを見たとき、自分の中でやけに納得するものがあった。
やはりこいつの本質はそっちなのだと。
女を抱くのに慣れた物腰。手つき。その表情。
自分を抱いてるのは気まぐれの産物であると。
腰に回される手は女を抱くためのものであると。
本来この熱は生まれるはずのないものだと。
そう身につまされた。

「へへ、最後まで入っちまった」
じりじりと緩慢に進んだ進入は普段以上にゾロの身体を苛んだ。分かるか?と、サンジの指が結合部をなぞり、それだけで痺れが背筋を這い上がる。言われずとも、尻に当たる腰骨の感触がそれを伝えた。ぐいと腰を揺らされるともう耐えきれず、たまらず身を前に屈めると目の前に迫った顔に奴が唇で触れてくる。口端をつつく舌に口を開けて応えてやった。唇は触れないで、目一杯伸ばした舌だけを絡ませあう。その間にも自分を浸食する熱はどくどくと脈打ち、サンジの舌がちらとひらめくたびに自分の内壁がうずく。

目の前の熱のこもった目が憎らしかった。その目はまだ余裕があると伝えている。まだ他の何かを映す隙がある。そんな事は許されない。自分を誑し込んだのはお前のくせに、テメェが欲しい、と言ったのはお前なのに。
俺はいつの間に、こんなにもお前に。畜生。

もっと、もっと。俺だけを見ろ。







事後のサンジは妙に上機嫌で、いやー、ゾロに押し倒されちゃったv 俺ってば愛されてるーぅ! と抜かし俺を脱力させた。こんな奴に捕まった俺も俺だ。
そんな自分にもサンジにもちょっとむかついたので、意趣返しをしてやる。

「愛してなきゃヤらせるかよ」

思惑通り、コックはぴぎゃ、とよく分からない声を上げて真っ赤になった。

ハハ、ざまぁみろだ。

■ end.
2005/07/13





当サイト初のサンゾロ。なんだか、甘ったるい、ですね。

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