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■ ジャマモノ ■

俺がゴーイングメリー号に乗船して約1ヶ月。
ようやっとこの船にも慣れてきたところだ。

ルフィは、戦闘のない時は本当にただのガキで。肉肉ばっか言うから、たまには肉以外の食材の名を言いやがれと思うが。こんなガキがあんな強さを持ってるんだから、人は見かけで測れないと心底思う。
ウソップはイイ奴だ。食材運びを手伝ったり、テーブルに皿を準備したり、細々した事を進んでやってくれる。なにより空気に聡くて、クルーの皆に始終気を配っている。
自分じゃキャプテンだのなんだの言ってるが、副船長としてはかなり優秀なタイプになるだろう。
始めはどうなるかと思われたゾロとの関係も、ココヤシ村での宴会以来なかなか良好だ。同い年って聞いた時はたまげたが。毎日のようにする喧嘩も立派なコミュニケーションだ。アイツも楽しんでるし、俺も楽しんでる。
そして、麗しのナミさん。レディがいるだけで華やぐのに、この船にいるのはスーパービューティホーなナミさん! なんて幸運な男だ、俺は。彼女を毎日見られるだけでもこの船に乗った価値があるってもんだ。

まあ、今まで同年代と船に乗る事なんてなかったから、慣れない事はあってもかなり楽しい日々だ。

そんなある日の朝、キッチンにある日めくりカレンダーを見たナミさんが言った。
「あら。今日、ゾロの誕生日じゃない?」
ゾロはちらりとカレンダーを見て、そうだな、とだけ返す。
おやまぁ。
そらそうだ、魔獣だって人の子なんだから、誕生日ぐらいあるわな。
それからキッチンにいたみんなで誕生日談義になった。
ナミさんは7月3日生まれ。
ルフィは5月5日、ウソップは4月1日。
で、ゾロが今日、11月11日。
話の最中、奴は別段興味なさそうだったが、せっかくの誕生日だ。
好物でも作ってやるか。

今日も飽きずに船尾でトレーニングしているゾロのところにおやつを運んでやる。
クルーにおやつを作るのは、この1ヶ月で既に日課になってしまった。

重りを振ってるゾロは、今日は珍しく腹巻きじゃない。
朝に、ナミさんから強制洗濯を命じられたからだ。
ゾロの腹巻きだけじゃなく、男部屋にため込まれてた洗濯物全部。
そのため、甲板では洗濯物がはためいている。

「おーいゾロ、一休みしろよ。おやつ」
おぉ、と応えて重りを置く。床がミシリと音を立てた。
手すりに寄りかかってアイスティーを飲むゾロは、あんだけ重い重りを振ってたってーのに汗もかいてなくて、そろそろ重りの増やしどきなんだろう。
いつもと違って黒いシャツのゾロは見慣れない感じで、普通の格好すりゃコイツも男前なんだよなーとか思う。いや、俺の方が格好いいに決まってるけど。

「お前さ、なんか食いたいもんある? 作ってやるよ」
「なんだいきなり」
「今日誕生日だろ。プレゼント」
ある食材でできるもんしか作れねぇけど。

「飯だけか、ケチくせぇな」

ゾロが小馬鹿にした表情を作る。

カッチーン。

でも、これはゾロが喧嘩したい時の合図。
それが楽しくてついつい乗っちゃう俺もまだまだガキだ。

「あぁん!? 手前ェ俺様の飯に不満でもあるってのか?」

「ハ、ちょっと色つけただけでプレゼントかよ」

あれ。おかしいな。
いつもならもっと勢いよく言葉が返ってきてとっくみあいになるのに。
表情も結構穏やか。
喧嘩したいわけじゃないのか?

「じゃ、手前ェはどういうのがプレゼントって言うわけ?」
ちょっと落ち着かなくて煙草に火を付ける。
距離を見誤りたくない。
「言ったところでお前に用意できるわけじゃないさ」
「言って見なきゃわかんねぇだろ。俺だってやれるもんはやるさ」
「言ったらくれんのか?」
あ、ちょっと面白そうな顔になった。
よかった。
「やれるもんならな?」
こっちもわざと生意気そうな顔で笑ってやる。

ふぅん、と面白そうに言ったゾロは空になったグラスを床の上に置いたあと、俺に一歩近づいた。

「じゃあ、コレ」

すっと伸びてきた指に、唇から煙草が抜き取られる。
は?

「煙草吸いたいのか?」

火付けたばっかだけど、煙草くらい新しいのやるのに。

「いーや? 邪魔だからな」

煙草を指に挟んだまま、意地悪そうな顔をしてゾロが笑う。
へぇ、こんな顔もするんだ、コイツ。
それにしても、邪魔って。

「何に?」

問いに対する答えは、言葉でなく行動でもって返された。

ふっと視界が陰り、ゾロが近づいた事を認識する間もなく、唇に触れるなにか。

は?

キス、されてる。

誰に。

ゾロだよ。

マジかよ。

「おっとあぶねっ」

何されてるか理解したと同時に身体が動き、上段をねらって回し蹴り。
大振りな動作のせいで簡単によけられる。

「て、て、て、手前ェは!何してくれてんだ!」

「キスだろ」

しゃがんだゾロが足下から平然と返してくる。
そういう事を聞いてるんじゃねー!

「お前は男にキ、キ、キス!して!楽しいのか!」

「お前なら楽しいな。くれるんだろ?プレゼント」

「やるとは一言も…うぁ!」

頭にがーっと血が上ったところを足払いされて押し倒された。

「…ふっ、ちょ、ゾロ!」

「うるせー口は塞ぐに限る」

「んん…、」

くっそコイツ関節技も相当修練積んでやがる!
外れねー!

上手い具合に押さえ込まれて、身動きできない状況でのキス。
最悪な事にコイツ、キス上手いんだ。
とろっとろに溶かされた。

脱力した俺を見て油断したんだろう、ズボンの中に手を伸ばそうとして押さえ込みが緩んだ隙に、渾身の力を込めて蹴り飛ばした。
遠くでどっぼーんといい音がする。

幾分ホッとして自分の格好を改めて見れば。
ネクタイは外れてるわ、シャツのボタンは全開だわ、ベルトのバックルは外れてるわ。
なんつー手の早い男だ。

あぁ、それにしても。

気持ちよかった…。

兆してしまった愚息をやるせない気持ちで見やる。
いつからお前はそんなに節操なしになったんだ、コラ。
お父さんは情けないぞ。

腹いせに、夕食はゾロの苦手な甘〜い焼きリンゴにしてやった。
まぁ、なに出してもアイツは残したりはしないんだが。

そんなわけで、その日からゾロに追いかけ回されている。
毎日、キスだけはする。
曰く、「この口は俺のもんだ」だと。
ふざけんな、とも思うのだが。
まぁいいかな、と少々ほだされ気味な自分が気の毒な今日この頃。


■ end.
2005/10/31




やっぱりあまり祝ってない(笑)。うちはゾロ誕と言いつつ全てこんな感じになりそうな予感…。




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